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newsletter vol.5 チョークアート作家  柏木 亜希さん

 
特別インタビュー

柏木亜希(かしわぎ あき)さん 
チョークアート吉祥寺教室
チョークアート工房アジアンオーク主宰


チョークアートは、黒板に色鮮やかなイラストや文字を描いたオーストラリアで生まれた
看板アート。まだ日本では広く知られていませんが、柏木さんは2011年からワ・ミューズ
で開催しているチョークアート教室でその技法を伝えています。癒しの効果もある不思議
なアートとも言うチョークアートの魅力について、お話を伺いました。








■塗り絵感覚で楽しく始められるチョークアート

 チョークアートは、発祥地のオーストラリアをはじめカナダ、アメリカなど欧米で発達してきたカフェやレストランなどの看板に用いられる商用アート。特殊な塗料を塗った黒板にオイルパステル(クレヨンより軟質なスティック状の画材)で描く立体的なイラストや、インパクトのある鮮やかな色彩が特徴です。チョークアーティストの柏木さんが、チョークアートの魅力を楽しく伝えようと開いたのが、ワ・ミューズのチョークアート教室吉祥寺校です。教室には、初級・中級・上級の3コースがありますが、絵なんて描けないという人でも構えずに始められますと柏木さん。
「初級では、絵の輪郭ができていて、そこに色を塗っていけばいい。つまり塗り絵から始めるんですね」。まずは、色をおきたい位置におけること、色を混ぜること、輪郭に沿ってオイルパステルで入れた白のラインを残すことができれば初級は卒業。なかなか上手くいかなくてもケシゴムで消したり、後から色を足すこともできて「全部修正可能です(笑)。指先で色を混ぜる感触がとても楽しいので、始めると夢中になれますよ」。
 色を混ぜるというのは、チョークアートを制作するうえでの大きな特徴のひとつで、オイルパステルで色を入れた後に、指で色と色の境界を混ぜ合わせてグラデーションをつくり出していくことです。グラデーションが絵に立体感や奥行きを出すと同時に、自分の指で混ぜて色彩をつくり出すことによって、その人らしさが表れる作品になると柏木さんは言います。カラフルな発色の良さ、指で混ぜる感覚など、チョークアートがもつ楽しさを味わって、「自分が気持ちの良いように描いてほしいですね」。


■気持ちを元気にしてくれる不思議なアート




 柏木さんがチョークアートに出会ったのは5年前。体調を崩して天職と思っていた日本語を外国人に教える教師を辞め、普通の会社員として就職した時に、日本語教師になる夢のほかに、高校生時代に美術クラブに所属して「美大に行って絵を描きたいという希望もあったんだ」というもう一つの夢を思い出したのがきっかけでした。趣味で絵を学ぼうと、絵画教室やカルチャーセンター、美大の通信講座などの資料を収集している時に、鮮やかに目に飛び込んできたのがチョークアート講座でした。
「幸運にも」と言う柏木さんは、日本チョークアートの第一人者ともいわれる栗田貴子さんのもとで学び始め、1年後には日本チョークアート協会の講師に認定されます。
「チョークアートは仕事にするつもりはなかった」のに、またたく間にチョークアートの楽しさに魅了され、「初級から始めて、上級を終えたときにもっと学びたい気持ちがあって、続けていくにはビジネスコースを選択するしかなかったんです」(笑)と、いつの間にかプロの道を歩いていました。
 チョークアートは不思議なアートとも言う柏木さん。「チョークアートやっていると、気持ちが元気になるんですね」。
 制作過程の中で、体験的に絵や色の癒しの効果に気づいた柏木さんは、アートセラピーを専門校で学び始めたという“思ったらすぐ行動”派。翌年にはアートセラピストの認定を受けました。アートセラピストとしての活動は、2011年の東日本大震災後、福島市内のカフェで始めたチョークアートを通じた被災者支援に結びつき、今も続いているそうです。教室でも「自分の呼吸でできた」という生徒さんがいるように、自分らしさを取り戻したり、元気になったり、夢中になれたり、心の内面にも作用するチョークアート。その魅力を伝えていきたいと思うと同時に、チョークアートを介した自分なりのアートセラピーの手法をどのように展開していくかが、柏木さんの今後の課題であるとも語ります。




■心模様を映し出すような作品をつくりたい





 チョークアート教室では、初級・中級・上級コースの生徒さんが一緒に学びますが、教え方はまるでマンツーマン。生徒さん一人ひとりに接して、色の選択から構図の取りかた、図柄のデザインなど、いま悩んでいること、迷いなど引き出し適切にアドバイスしていきます。その姿に、10年間日本語を教えることを通じて、教えることがどういうことかを学んだという柏木さんの教師としてのキャリアを感じさせます。
「日本語を教えたことが今、とても役に立っています。教えるのはスキルではないんですね。相手と私がお互いに通じ合えることが大切で、伝わった瞬間がとても嬉しいんです」。プロの作家として看板制作の依頼も受けますが、「教える方がもっと好き」とも言う柏木さん。そして思うのは、チョークアート=看板アートでなくてもいいということ。
「沖縄を旅行した時に、ふと耳にした三線奏者の、嬉しい時も哀しい時も、自分のなぐさみのために 弾くという言葉が心に響いてきて、あっ、チョークアートが自分のために描くアートであってもいいん だと思えたんです」。
 そう語る柏木さん自身が、これから描きたいのは、チョークアートの手法を使いつつ、いわゆるチョークアート的でない「自分の心模様を映し出すような作品」。そして、それを表現しようとすると抽象的なものになると言います。チョークアートは食べ物であったり、花であったり、具象的なものを対象にして描くのが一般的な中で、抽象表現は柏木さんの新たなる挑戦とも言えるかもしれません。
「私、朝起きたときに爆発したくなることがあるんです」(笑)と、一瞬、周りをビックリさせましたが、それだけエネルギーがあるということなのだそう。穏やかな外見からは分らない、ふつふつと燃えるものを内に秘めているのでしょう。富士山麓の町で生まれ育って間近に見てきた「休火山だけど、内部ではマグマが燃えている」富士山のように。その柏木さんのエネルギーが、「自分を表現する存在であってほしい」と言うチョークアートの新しい作品世界を開いていくに違いありません。



■プロフィール
 2007年までの約10年間、成年外国人を対象に日本語教師を務める。2008年チョークアート第一人 者栗田貴子氏に師事。翌年、日本チョークアート協会のチョークアート講師に認定。2010年オーロ ラアートセラピストに認定。2009年チョークアート・アジアンオーク設立。2011年、8月より福島市内 にてチョークアートを通じた被災者支援を始める。11月ワ・ミューズにてチョークアート教室を開く。
 2013年11月14日~17日、吉祥寺のギャラリー永谷にて、チョークアート教室の参加者による作品展示会開催。

☆第一回チョークアート吉祥寺教室二周年記念作品展
 「a gift ~心、満たすもの~」
2013年11月14日(木)13時~20時 15日(金)16日(土)11時~20時 
17日(日)11時~16時 ギャラリー永谷
展覧会・教室のお問い合わせ 下記のホームページ から

HP   :http://asianoak.jp/

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